病院では、少数の手話単語だけで受診を完結させないことが大切です。受付や場所案内は、短い手話や筆談で進められる場合があります。診断や治療、同意などの重要な説明には、専門通訳や文字など、本人が必要な情報を受け取れる手段を準備します。こうした手段を「情報保障」と呼びます。対応の有無、時間、予約方法は病院ごとに異なるため、来院前に尋ねてください。

「病院」という単語の手話をすぐに確認する

単語の表し方を探している方は、大府市の「病院」の手話動画へ進めます。まず実演を通して見て、手の形だけでなく、位置と動きも確認しましょう。静止画の印象から自己流の動作を作ったり、動画を左右反転して覚えたりしないようにします。

受付から診察までのやり取りを学びたい場合は、釧路市の医療編も入口になります。この後は、受診する人の準備と、医療者が整える情報保障を順に説明します。

病院へ行く前に確認すること

受診する人が、受付で見せるメモ

今日は○○科を受診します。呼び出しは番号表示/近くで知らせる方法を希望します。説明は手話通訳/筆談を希望します。予約は○月○日○時、名前は○○です。

必要な部分だけ選び、紙や端末で示せるようにします。症状は「いつから/どこが/どうつらいか」を別欄に書くと、受付の希望と混ざりません。これは日本語の連絡メモで、医療の手話文や診断の説明ではありません。

具体的な窓口例として、大阪府立病院機構は患者負担なしの手話通訳を案内しています。大阪国際がんセンターでは診察予定日の一週間前までの申出が必要とされ、同じ機構でも条件が違います(2026年9月9日確認)。自分の受診先へ、診察だけでなく検査・会計でもどう連絡できるかを相談しましょう。

スタッフが事前に学ぶ挨拶はこんにちはなどの無料動画から確認できます。症状・治療・同意の説明を、挨拶動画で代替するものではありません。

手話通訳の有無・予約方法

病院の公式サイトか患者相談窓口で、手話通訳者の配置・派遣・遠隔通訳の有無を尋ねます。「手話対応可」が、手話のできる職員による案内なのか、専門通訳なのか、対応範囲も確認します。

対応時間と費用

受付時間内でも通訳者が常駐しているとは限りません。予約の期限、対象診療科、院内の対応範囲、利用者負担、キャンセル時の連絡を確認します。自治体派遣を利用する場合は、自治体と病院のどちらへ申請するかも尋ねます。

筆談・遠隔通訳・呼出し方法

筆談器、タブレット、文字チャット、遠隔手話通訳の用意と、待合室の呼出しが画面・振動・職員の合図で受けられるか確認します。音声だけの変更案内を受け取る方法も決めておきます。

来院前チェック利用者本人の情報
希望する手段日本手話/筆談/文字/専門通訳など
通訳の予約連絡先・日時・対応範囲
呼出し画面、振動、直接合図
伝える情報症状メモ、薬、アレルギー、既往歴
緊急連絡本人が利用できる連絡手段

病院で使う基本表現

ここでは「何を伝えるか」を整理します。手の形や動きは文章から推測せず、ろう者が実演し、出典の示された動画で学んでください。

受付・予約・保険証

  • 予約の有無、診療科、初診・再診。
  • 氏名、生年月日、診察券・保険資格確認の方法。
  • 希望するコミュニケーション手段。
  • 通訳者を予約済みか、到着しているか。

個人情報は人目に触れる大きな紙へ不用意に書かず、病院の安全な受付方法を使います。

症状・痛み・いつから

部位、始まった時期、変化、程度、きっかけ、服薬、アレルギー等を伝えます。単語一つで「痛い」とだけ伝えると、診断に必要な情報が不足します。事前に時系列のメモを作り、医療者が質問し、本人が答え、最後に理解を相互確認する流れを取ります。

検査・診察・質問

検査名、目的、手順、所要時間、結果の受け取り、注意事項を確認します。分からない場合は、分かったふりをせず、言い換え、図、書面、専門通訳を求めます。

会計・処方・薬局

会計金額、次回予約、処方箋の有無、薬局の場所を確認します。薬は名称、用量、回数、時間、期間、併用、注意事項を、薬袋・説明書と通訳等で照合します。この記事の表現は服薬指示の代わりではありません。

「病院」の手話と、受診の場面を一緒に学ぶ

病院・医師・診察の教材を探す

「病院」という単語の表し方を知りたい方は、奈良市の手話単語「健康編」で、病院、医師、診察、病気、けが、救急車などの項目を確認できます。本サイトへ画像や動作説明を転載せず、出典を示した自治体の教材を学習先として案内しています。

同じ健康に関する語でも、「病院へ行く」「医師に尋ねる」「検査の説明を受ける」では伝える内容が違います。まず単語を確認し、その後は本人が何を知りたいかを整理して、質問と返答をつなげます。

受付を通過できても、受診全体が分かるとは限らない

受診前には、次の四つを病院と相談しておくと、途中の説明が抜けにくくなります。

受診の段階本人が知りたいこと病院と決めておくこと
待合いつ・どこで呼ばれるか音声以外の呼出しと、変更の伝え方
診察質問への回答、説明の意味通訳や文字の利用、質問できる時間
検査何をするか、次にどこへ行くか開始・終了・中止の合図と説明方法
帰宅前次回の予定、連絡が必要なとき日時を記した書面と、利用できる連絡先

検査中に手を動かしにくい、眼鏡を外して見えにくいなどの条件があれば、始める前に医療者へ伝え、連絡方法を相談します。具体的な検査の可否や対応は医療者の判断と説明を確認してください。

受診後の質問も、連絡できる方法で残す

「何かあれば電話してください」だけでは利用しにくい場合があります。病院・薬局へ、メール、予約システム、FAX、電話リレー等のうち受け付けている方法を尋ねます。受診日だけでなく、帰宅後も本人が質問できることまで確認するのが、通院を続けるための準備になります。

医療者が確認したいコミュニケーション方法

本人の希望を最初に聞く

聞こえ方や手話の使用は人によって異なります。「ろう者なら手話」「難聴者なら筆談」と決めつけず、本人が選べる形で確認します。

本人へ直接話す

通訳者や同伴者だけを見ず、意思決定する本人へ向けて話します。通訳者は言語アクセスを支えますが、会話の相手は本人です。子どもや家族だけへの説明に置き換えないでください。

理解を相互確認する

「分かりましたか」で終えず、医療者も自分の説明が伝わったかを確かめます。本人に要点を返してもらう場合は、理解を試すためではなく、説明方法を改善するためだと目的を共有します。

医療者の研修例:「手話の病院」とは

順天堂大学が公開した「手話の病院」は、ろう者が医療者役、医学生が患者役になって受診を体験する教育プログラムです。手話で診察を受けられる実際の外来の名称ではありません。

この実施報告では、受付で呼ばれたことに気づく場面から、症状を伝え、薬の説明を受ける場面までを扱っています。職場の振り返りにも、「受付を終えたか」だけでなく、説明を受けて質問し、その返答まで理解できたかという視点を取り入れられます。体験だけで患者の経験を分かったと決めず、本人やろう者、通訳者の意見を聞いて改善することが大切です。

手話・筆談・通訳の使い分け

手段向く場面限界・注意
短い手話挨拶、場所、待機等職員の技能を超える説明へ広げない
筆談・文字日時、名前、短い確認長文・難語・日本語習熟度へ配慮
図・指差し部位、移動、手順の補助診断や同意を図だけで確定しない
専門通訳問診、診断、治療、同意、退院支援予約・守秘・専門分野を確認
遠隔通訳現地手配が難しい場面通信、画面、プライバシー、緊急時の代替

緊急時や重要説明

生命・身体に関わる緊急時は、地域の緊急通報・医療機関の指示を優先してください。定型手話を探すために受診を遅らせません。到着後は、本人の希望する手段を早く確認し、可能な限り専門通訳・文字・図を確保します。

手術や、身体に器具を入れることなどを伴う検査(侵襲的検査)、治療の選択、退院、終末期、費用などの重要説明では、家族の善意や自動翻訳だけに依存しません。本人のプライバシーと自己決定を守れる通訳体制を調整します。

病院では正確な情報保障を優先する

  • 病院の手話対応は時間・予約・範囲が異なるため来院前に確認する。
  • 受付の定型場面と、症状・診断・同意等の専門場面を分ける。
  • 本人へ直接説明し、手話・筆談・文字・専門通訳を希望に合わせて組み合わせる。
  • 緊急時は受診を優先し、この記事やアプリを診断・服薬指示の代わりにしない。

参考情報

日常の学習に手話しゅわ

必要な場面に備えて、基本表現を練習する。

医療・防災・金融などの重要な場面では公式案内や専門的な支援を優先し、アプリは日常語彙の事前学習にお使いください。

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